防災科研の火山観測

火山観測

防災科学技術研究所の火山活動観測網

防災科学技術研究所がプロジェクト研究「火山噴火予知と火山防災に関する研究」の一環として展開している、地震・地殻変動観測を主とした火山観測網です。現在,富士山,三宅島,伊豆大島,那須岳、硫黄島に設置されています。各火山には3箇所から6箇所の火山観測施設が置かれており,地震計や傾斜計など火山活動を観測するセンサーによる観測を行っています。各施設で得られたデータは,電話回線や衛星通信を利用して常時連続的に研究所に送られ,地震波の検出や震源の決定などの処理を行って保存されます。これらのデータは、防災のための情報として公開されるとともに火山噴火予知研究のデータベースとして利用されています。

火山観測施設

観測施設火山観測施設には,さまざまな観測装置と,データを研究所まで送信するテレメータ装置が設置されています。このうち短周期地震計と傾斜計は,地表付近の堆積物による地震波の増幅やノイズの影響,降雨や地面の温度変化,気圧の変化など,火山以外の要因による変動の影響を出来るだけ避けるため,深さ100~200mのボアホールの底に設置されています。また,噴火活動が活発化した時の停電や電話回線の切断に備えて,ソーラーパネルや衛星通信用のパラボラアンテナも設置しています。

図1(右)標準的な火山観測施設の模式図

火山での地震観測について

マグマ溜り火山噴火とは、地下にあるマグマやガスなどが地表から放出する現象です。噴火直前のマグマなどが上昇していく過程で、岩盤を割り、通り道を作りながら移動していきますので、たいていの場合、地震活動が活発化します。地震の観測によって、地震発生数の変化から噴火を予知したり、地震の発生地点(震源)の分布からマグマの移動箇所を推定できる場合があります。また,マグマやガスなどが発生に関係していると考えられている低周波地震や超低周波地震から火山の地下の状態を推定する研究も進められています。ただし,すでにマグマの通り道(火道)がある場合や、高温のため地震が起こりにくい場所でマグマが移動した場合、地震観測点が近くにない場合などは、地震が観測されないこともあります。

図2(右)マグマが上昇する様子の模式図

地震計

短周期地震計

短周期地震や低周波地震や火山性微動を主に観測するために使用します。地表付近の堆積物による地震波の増幅やノイズの影響を出来るだけ避けるため,100m~200mの深さの観測井の底に置かれています。

広帯域地震計

 

広帯域地震計は、主にマグマの活動や噴火に伴って発生する周期の長い地震や微動を観測するために使用します。

広帯域地震計写真1(左)STS-2型広帯域地震計

火山で観測される地震の種類

短周期地震(構造性地震)

一般的な地震と同じくP波とS波が明瞭に見られる地震です。火山活動に伴って、既存の断層が動いたり新たな断層を作ったりするときに発生すると考えられています。富士短周期地震

図2 富士山で観測された高周波地震(2001年2月17日)

長周期地震(低周波地震)

火山特有の現象である通常の地震(火山性地震)よりもゆっくりとした周期を特徴とする地震のこと。通常の地震では 5~20Hzくらいが卓越するのに対して、低周波地震では1~2Hzであることが多い。普通マグニチュードは1~2程度です。これらは、表面での噴火活動と関連して発生する浅部低周波地震(地表から地下3kmくらいまで)と、表面活動とは直接関係ないものの、火山下15~30km付近で発生する深部低周波地震があります。このような低周波地震は、マグマや熱水が関連して発生するものと考えられていますが、詳しいことはまだ分かっていません。富士低周波地震

図3 富士山で観測された低周波地震地震(2001年2月17日)

火山性微動

火山周辺で発生する継続する振動のことを総してこのように呼びます。地下のマグマや熱水が地下の割れ目を通過したりすることにより発生すると考えられています。

硫黄島微動

図4 硫黄島で観測された火山性微動(左:2001年10月21日,右:2001年11月29日)

火山での地殻変動観測について

噴火直前のマグマなどが上昇していく過程では、火山はわずかに変形します。その変形を精密に観測することによって,噴火を予知できる場合があります。観測データが十分あれば、上昇したマグマの位置、量、形を推定することが出来ます。また,噴火の準備期間にもマグマがマグマ溜りに少しずつ蓄積されることによる火山の膨張が観測されることがあります。

地殻変動

図5 火山性地殻変動発生の模式図

火山観測網に設置している地殻変動観測装置の種類

傾斜計

傾斜計傾斜計は、地表の傾きの変化を観測するセンサーで、0.1マイクロラジアンの変化を捉えることができます。0.1マイクロラジアンは10km先が1mm上下する傾きに相当します。降雨や地面の温度変化,気圧の変化による変動を出来るだけ避けるため、短周期地震計と同様に,100m~200mの深さの観測井の底に置かれています。

写真2(右)振り子式傾斜計

GPS

GPS衛星からの電波を受信して,その場所の位置を精密に測定する装置です。カーナビゲーションで利用されている単独測位法とは異なり,2点以上で受信した電波の位相差を利用することによって数mmの精度で位置を測定することが出来ます。

歪計

歪計は、岩盤の伸び・縮みを観測するセンサーです。防災科研の火山観測網で使用している歪計は3成分歪計と呼ばれるもので,水平の面積歪とせん断歪を測定することが出来ます。

火山観測網に設置しているその他の装置

磁力計

磁場の変化を計測するセンサーです。火山を主に構成する岩石は磁気を帯びていますが、マグマが上昇することなどにより岩石の温度が上昇すると磁気が失われます。磁場の変化を観測することにより,地下の温度変化などの火山活動の変化を推定するために使用されます。防災科研の火山観測網で使用している磁力計は,フラックスゲート型3成分磁力計です。

重力計

重力の変化を計測するセンサーです。地盤の上下や地下のマグマの移動などによる重力値の変化を捉えるため設置しています。防災科研の火山観測網で使用している重力計は,シントレックス社製の相対重力計CG-3Mです。

NIEDロゴ